注)触れてはならない免許

鍼灸マッサージの役割:共生からの考察

Untouchable!

鍼灸マッサージ師といわれますが、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師という3つの資格を一括りにした総称です。視覚障害者のための養成施設・学校、ならびに古くよりある晴眼者のための養成施設・学校では、この3つの資格を取得することができます。つまり、ここを卒業した伝統ある鍼灸マッサージ師にとっては、マッサージ師が機能訓練指導員と認められるので、介護保険制度のなか虚弱化した高齢者の機能訓練を担うことに、何ら問題はないのです。

10年前の介護保険制度創設に際して、“鍼灸は医療行為そのものであって介護ではない”という考えから、制度参入に向けての足並みがそろわなかったと仄聞している。また、鍼灸師の介護保険参入について、医療業界からは殊更の反対もなかったと記憶している。しかし、今となっては単に機能訓練指導員として認めてほしいという要望さえも、高いハードルとなってしまった(上田,2011)。

真偽の程は定かではありませんが、上記のような噂が、あちらこちらで囁かれています。介護保険制度のなかで活躍する機会を得る機能訓練指導員という資格要件を“鍼灸師”は放棄するという決定を下した責任者は、いったい誰なのでしょう。それが鍼灸師の代表なのか、鍼灸マッサージ師の代表なのかで、この決定の意味するところは全く異なってきます。

あはき法第19条ができた昭和39年以後、あん摩マッサージ指圧師の養成施設は1校も新設・定員増が認められていません(時任,2007)。それ以降につくられた養成施設・学校では、はり師・きゅう師の資格のみが取得できます。この鍼灸師である新参者のなかには、鍼灸大学・大学院も含まれます。鍼灸マッサージ師と鍼灸師は別物であり、これを隔てる深い河は、いくら学識を積んでも渡ることはできません。

鍼灸マッサージは視覚障害者の職業というのは昔のことです。平成24年末の視覚障害者の割合は、あん摩マッサージ指圧師23.5%、はり師14.8%、きゅう師14.3%となっています(厚生労働省,2014)。そのなかで、マッサージ師免許に規制緩和の波が押し寄せたなら、一番被害をこうむるのは、これまで鍼灸マッサージ業界を牽引してきた古参の養成施設・学校、および、その指導的立場にある方々でしょう。

鍼灸師にとって益のある機能訓練指導員という資格要件を放棄した根には、マッサージ師免許にまつわる利権を守ろうとする力が介在していたのでしょうか。伝統と既得権は、表裏の関係にあります。表に現れる既得権という病邪を滅したとき、裏にある伝統が瓦解するかもしれません。表裏を心得る鍼灸マッサージ師にとって、マッサージ師免許の規制緩和など、視覚障害者側からも晴眼者側からも、触れてはならない禁制の事柄なのです。


厚生労働省(2014)平成24年度 衛生行政報告例,就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師,目が見える者-目が見えない者別;柔道整復師数及び率(人口10万対).厚生労働統計協会,p.418-419.

時任基清(2007)鍼灸マッサージ業の現状と課題,文京はり研究会講演レジュメ.文教鍼研究会.http://www.wind.ne.jp/khari/kenkyuu/07-12-16tokitou.html,(参照日2016年4月28日).

上田孝之(2011)介護保険における機能訓練指導員として鍼灸師を認めさせる取り組みについて.鍼灸柔整新聞平成23年7月25日「医療は国民のために85」.日本保健鍼灸マッサージ柔整協同組合連合会.http://www.nipporen.jp/「介護保険における機能訓練指導員として鍼灸師/,(参照日2016年11月2日).

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