謎かけのような音楽家の症状への訴えゆえに、お願い


Health lounge

音楽家のジストニアについて、その3


2017-02-09


演奏家の職業病といえば、かつては指の酷使による腱鞘炎がその代表であったといわれます(中野,2015)。また、最も故障の多い部位は、指を動かす筋肉が付着する手や前腕ですが、肩や背中に痛みを訴える演奏家も多いことが知られています(古屋,2011)。日常的に運動負荷のかかっている部位は、筋肉や腱、関節などが障害されやすいということです。

職業演奏家が抱えている身体症状を調査した報告によれば、「顎と肩で楽器を支え、早い指の動きを必要とするヴァイオリン・ヴィオラは、特に頸と肩に症状が多くみられた。下肢で楽器を安定させて、演奏するチェロ・コントラバスでは、腰の症状が多い傾向であった。またフルート・オーボエ・クラリネットのような木管楽器では、腕・手首・指などに症状が多く、金管楽器は木管楽器と比較して、頸・肩・上肢の症状が少なかった」といいます。そして、「全ての楽器において頸・肩・腰の症状が多く、音楽家がこの部位の治療、障害予防を必要としていることが示された」とあります(齋藤・秋山,2006)。

小さな歪みでも悪影響をおよぼす

ベネッセ教育情報サイト「子どもたちの咬み合わせに要注意!」という記事のなかで、「バイオリンなどあごを使う楽器を演奏するなども、あごがずれる原因となります」との指摘があります。

肩と顎の間にヴァイオリンを保持して演奏するには、左右非対称で顔、首、肩の筋肉を動かさなければなりません。この筋肉活動がおよぼす青年期の顔面成長への影響を調査した研究によれば、対象とする音楽大学の学生の歯や顎に、左右で発育や傾きに有意差がみられたと報告しています。そして、ヴァイオリンを習う青少年の歯列矯正治療の必要性を述べています(Kovero et al., 1997)。

しかし、学者先生が学術的に指摘する有意差は、重箱の隅をつつくような、一般生活者の立場からみれば微々たる差かもしれません。もしも、子供の頃からヴァイオリンを演奏していると必ず、歯列矯正治療が必要になるくらい顔が歪むなら、ヴァイオリン教室に我が子を通わせる親はいなくなるでしょう。問題は、無理を強いるような間違った姿勢で練習を繰り返していることにあるのかもしれません。

けれども、その微々たる左右差が、違和感となって長年にわたり蓄積されると、感覚がおかしくなり、やがて機能が障害され、複合的な症状をつくるようになります。たとえば、顎関節の後ろには、脳からのびる神経(自律神経など)や脳を栄養している血管が密になって走行しています。そのため、顎関節や首につくられたコリ感がひどくなれば、自律神経の働きを乱して様々な不定愁訴をつくる要因となります。

謎かけのような主訴が少なくない

ひどい肩こりを訴えるヴァイオリンやヴィオラの演奏者がおいでになります。そのなかで、指さきや腕にシビレや違和感のあるときは、胸郭出口症候群が予想されます。胸郭出口部で神経や血管を圧迫するような演奏姿勢に関係しているのかもしれません。

チェロやピアノなど座位時間の長い演奏者の腰痛も職業病でしょう。椅子に座った姿勢は、骨盤が後傾位になるので腰椎の前弯が減少します。そのため、立位姿勢と比べて椎間板の後方にかかる圧力が増加します。このような椎間板への負荷が、日頃から持続されていると、腰椎椎間板ヘルニアを患うリスクが高くなります。くわえて、背腰部の筋肉が疲労することで、筋筋膜性腰痛を発症するかもしれません。

ところが、上記のような教科書通りの症状を訴える人は稀です。演奏家が、当治療院で症状を訴えるときは、「こうすると、どうもおかしい、なんとなく・・・」という表現が主訴であることが少なくありません。謎かけのような「その心は」、症状自体の軽減・緩和よりも、症状によって思い通りの演奏ができない悩みを訴えているように察せられます。そのうえ、芸術家の感性を通して表現される言葉は、容易に理解することを許しません。

6回は継続して施術を受けてみて下さい

演奏家の謎かけのような訴えには、局所の症状にとらわれることなく、姿勢を含めて全体から原因を精査していくように心掛けています。ただし、難解な問題を理解し、解決策となる施術を適切に組み立てるまでには、およそ6回は継続して施術を受けていただきたく願います。さらに、施術者と一緒になって効果のある施術方法を見出していただければありがたく存じます。


古屋晋一(2011)楽器演奏のパフォーマンスを阻害する筋収縮.バイオメカニズム学会誌,35(3) :p.168-175.

Kovero, O., Kononen, M. and Pirinen, S.(1997)The effect of violin playing on the bony facial structures in adolescents. European Journal of Orthodontics, 19(4) : p.369-375.

中野研也(2015)演奏家のジストニアの実践的対処法に関する考察:演奏者の視点から.仁愛大学研究紀要,人間生活部篇,7;p.117-125.

齋藤里果・秋山純和(2006)音楽家の身体症状とその対処法:音楽家へのアンケート結果より.理学療法科学,21(4):p.447-451.



脊柱矯正・鍼療法

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