加齢に伴う変形が、痛みの原因ですか?

痛みの原因として、「骨に変形があるから」という解説があります。たしかに、痛みに関連する領域には、相応の骨性の変形が認められるかもしれません。しかし、骨棘や関節の摩耗など骨性の変形が痛みの直接原因なら、保存療法で痛みを和らげることは難しいでしょう。

カイロプラクテック・マニピュレーションだけでなくマッサージ、鍼療法、牽引や温熱療法なども保存療法です。しかし、加齢に伴う骨性の変形が予想される腰痛や膝関節痛などでも、その多くが保存療法で痛みの軽減を得ることができます。それでは、何が保存療法により変化して、痛みが和らいだのでしょうか?

腰椎や膝関節にみられる骨性の変化は、腰痛や膝関節痛の患者さんにのみ認められるものではありません。50歳以上になれば、普通に生じてくる生理的な変化だとされています。そして、骨性の変形に起因する痛みは、さまざまな病態が重なって発症します。

たとえば、椎間板の変性、椎体の骨棘形成、椎体周辺の循環障害、椎間関節の変性…etsこのような脊柱の変化が、不安定性に基づく靭帯の緊張、腰筋の疲労などの要因となります。さらに、このような要因が複合することで、加齢に伴う骨性の変形を基調とする痛みが生じます。

ただし、骨性の変形が重篤になれば、それ単独で痛みが生じる可能性はあります。このような場合は、当治療院の保存療法は、鎮痛効果が限定的かもしれません。その場合は、当治療院だけでは施術をおこなわず、病態に適した病院等をご紹介いたします。

骨性の変形に起因した病態について、「可逆的な要因」と「不可逆的な要因」があります(出端,2002)。たとえば、 当治療院の保存療法では、骨性の変形を癒すことは難しいと思われます。しかし、低下した椎間板や椎間関節の機能を高めること、靭帯や筋肉の過剰な緊張を和らげること、疲労を癒すことなどは可能です。このように、可逆的な因子を改善してゆくことにより、骨性の変形に起因した腰痛や膝関節痛でも、痛みの緩和は得られるでしょう。

当治療院では、脊柱の固着や歪みを病態把握の道標としながら、その機能の回復を促すことを施療の目的としています。さらに、施術効果に日頃の養生が相乗するとき、柔軟性や筋力の向上を得ることができます。そして、この効能の延長線上に、姿勢の歪みの「矯正」がなされていくものと理解します。ただし、一般的に痛みの緩和は、脊柱部の機能回復よりも前に得ることができるでしょう。


出端昭男(2002)開業鍼灸師のための診察法と治療法(8)医道の日本社.p.51-52.