関節を動かす刺激が痛みを抑制します

痛みを和らげようとする無意識の動作には、「強く押さえる」「皮膚を擦る」「関節を動かす」があります。「痛い、痛い」といいながら患部をもみほぐす人はいないはずです。痛みが治まってきたころをみて、反射的に緊張した筋肉をもみほぐしながら、「あぁ~痛かった」とひと息つくものです。「もみほぐす」と「動かす」では、刺激される神経に違いがあります。そして「動かす」とき、痛みが和らぐメカニズムが働きます。

間違って指を挟んでしまったら、どのような行動をとるでしょうか。「痛たたたたっ!!」と手首を振りませんか。なぜ、手首を振るのでしょうか?それは、手首を振るという行為に鎮痛作用があるからです。

太い神経の働きは、細い神経の働きを抑制します。運動をつかさどる神経は、痛みを伝達する神経よりも太くなっています。そのため、運動神経が働くとき、痛覚神経の働きを抑制します。ゆえに、手首を振るという運動が、痛覚神経の働きを抑制して、痛みを和らげるのです。これが、ゲートコントロール説です。

・ 太い線維の活動性が細い線維よりも強ければ、ゲートは閉じて痛覚インパルスは抑制される

・ 細い線維の活動性が太い線維よりも強ければ、ゲートは開いて痛覚インパルスは増強される

難しい神経生理学に基づいた鎮痛のメカニズムを知らなくても、自然に手首を振り、痛みを和らげようとします。カイロプラクテック・マニピュレーションは、 手技により身体力学的な刺激(アジャストメント)を効果的に与えることで、このメカニズムを最大限に発揮させようとします。

矯正刺激(Adjustment)を施すとき、伸ばされた関節内で気泡となったガスが、関節の中心部に集まります。そして、関節内の負の圧力が失われたとき、「ポキッ」とはじける音がします。この音は、「関節の空隙化」と呼ばれます。空隙化して負の圧力を失うことで、関節が広がり可動域が増大します。

矯正をおこなった関節は、可動域が大きくなり、周囲の腱、靭帯、筋肉などが伸ばされてリラックスします。さらに、関節周辺にある感覚受容器が刺激されます。すると、この太い感覚神経への刺激が、痛みを伝える細い神経の働きを抑制するために、痛みが軽減されるのです。

メルザックとウォールのゲート・メカニズムの一例は、足首の捻挫である。これはもちろん痛みをもたらす。捻挫した直後に、狂犬があなたに向かって走って来たら、あなたはすぐに現場から逃げ出すだろう。猛スピードで走っているとき、脳に感覚情報が伝達される。この情報は、とりわけ固有受容器からのものである。固有受容器が体位を決定する。この情報過多伝達によって、一時的に足首の痛みがブロックされて走ることを可能にしてくれるのである。もちろんその後、あなたは関節にさらに損傷を与えてしまっているので、痛みは以前の 2 倍のレベルになって戻ってくるが、少なくとも尻に犬の歯型がつくことはない。

グラント・レイド D.C. は、鎮痛のメカニズムについて、ジョークをまじえて例えています。実に、ユニークな先生です。


グラント・レイド(2001)カイロプラクティック マニアル.医道の日本社.p.22.