脊柱管狭窄症

症状・原因

椎骨の椎体と椎弓によって囲まれところは「椎孔」といいます。椎孔は、椎骨が重なり合って脊柱をつくるとき、縦に連なる長い管を構成します。これが「脊柱管」で、第2腰椎より下には馬尾神経が縦走しています。

楕円形をした脊柱管は、正中部と外側陥凹部にゆとりの空間をもっています。ところが、加齢による骨組織・軟部組織の退行性変化により、脊柱管が狭くなることがあります。

脊柱管が狭小化することで、そこを通る神経根や馬尾神経への血液循環が阻害されます。こうした神経の阻血により、下肢の神経症状、とくに間歇跛行を発現する病態が「脊柱管狭窄症」です。

脊柱管狭窄症の発病年齢は、50歳以上で好発します。そのことから、変形性腰椎症の一種とも考えられます。

脊柱管狭窄症による間欠跛行

数10m~数100mの歩行で、両側もしくは片側の下肢全体に疼痛、シビレ感、知覚異常、脱力感、冷感などが生じて歩行不能になります。数分間の休息、とくに前屈位の姿勢によって急速に症状の緩解し、再び歩行可能になります。これが、脊柱管狭窄症による神経性間欠跛行の特徴です。

下肢動脈の閉塞による動脈性間歇跛行では、前屈位で緩解をみることはありません。下肢腱反射の亢進や病的反射(バビンスキー反射など)があれば、脊髄性間歇跛行が示唆されます。

脊柱管を狭窄する複数の要因

脊柱管の狭小化に関与する組織は、椎間板、後縦靭帯、椎弓、上・下関節突起、椎間関節などです。これらの組織の変性が、単独で関与するのではなく、複数の因子が重なり合って発症します。

1) 生まれつき脊柱管が狭い

2) 椎体の外側にできる骨棘

3) 椎弓の肥厚

4) 椎間関節の肥厚変形

5) 変性すべり症

6) 椎間板の膨隆

7) 黄色靱帯の肥厚

8) 炎症による浮腫

9) 非生理的な緊張 など

自分だけが感じる「自覚症状」

1) 神経性間欠跛行

2) 腰痛(朝起床時、長く立っていたり歩いたりすると痛む程度)

3) 下肢痛(坐骨神経領域が多い、大腿神経領域のこともある)

4) 罹病期間が長くなると、安静時も下肢にシビレや冷感がある

5) 馬尾型や混合型では、狭窄が高度になると膀胱直腸障害、会陰部症状、麻痺を呈する

他者がみても分かる「他覚所見」

1) 多くで腰椎部の前弯減少、構築性側弯がみられる

2) すべり症を合併するとき、腰椎部に階段変形が認められる

3) 腰椎の後屈運動が制限されやすくなる

4) 後屈の姿勢を保持したり、患側へ後側屈したりして、下肢に症状が再現される

5) 下肢伸展挙上テスト(SLR)は陰性が多い、神経根型では軽度陽性、椎間板ヘルニアとの合併症で陽性となる

6) 馬尾神経が障害されると、両側のアキレス腱反射が低下・消失する

7) L2よりも上位に狭窄があれば、膝蓋腱反射が亢進する

8) 馬尾神経障害の経過が長いと、両側の下肢に筋力低下・筋萎縮が出現する

施術のポイント

可逆的な要因  … 炎症性の浮腫、関節機能の低下、非生理的な緊張、循環障害など

不可逆的な要因 … 骨棘、椎弓の肥厚、靱帯の肥厚、関節の肥厚、椎間板の膨隆、すべり症など


脊柱管を狭窄する要因には、「可逆的な要因」と「不可逆的な要因」があります。

脊柱管狭窄症は、加齢による骨組織・軟部組織の変化を基調に、複数の要因が重なって脊柱管が狭くなり、そこを通る神経根や馬尾神経への血液循環が阻害されることで発症します。

当治療院のマニピュレーション操作・矯正は、可逆的な要因を改善することを基本とします。とくに、過緊張の軽減と血液循環を促すように「椎間関節の機能」「脊柱管を広げる姿勢」に注目して施術をおこないます。

椎間関節の機能

神経根型の脊柱管狭窄症は、椎間関節の肥大によって、脊柱管の外側陥凹部に狭窄が生じます。坐骨神経痛を主症状に、殿部から下肢に痛みやシビレがある場合は、椎間関節の機能改善を促します。椎間関節面に沿って脊柱管を広げる方向に、運動操作を施します。これにより、

1) 血液循環が促され、滑膜の炎症、炎症に起因する浮腫が軽減される

2) 関節包や靭帯の非生理的な緊張が緩和される

3) 運動刺激により知覚神経の働きが抑制され、痛みに過敏な状態が軽減する

4) 椎間板にも良い治療刺激が与えられる

脊柱管を広げる姿勢

脊柱管を広げる方向とは、腰椎の反り返り(前弯)をなくすことといえます。基本として、この腰椎前弯が減少した姿勢を学習させるように操作・矯正を施します。

脊柱管が狭小化すると、そこを通る神経根や馬尾神経への血液循環が阻害され、痛み、シビレ感、知覚異常、脱力感、冷感が生じ、歩くことができなくなります。

前かがみの姿勢で休息すると、急速に症状の緩解し、再び歩行可能になります

前かがみで痛みがとれるのは、関節と神経の間が広がるためです。逆に腰を反らせる姿勢は、脊柱管狭窄症の症状を悪化させます。つまり、腰の反り返りを減らす方向が、症状を改善する運動操作の方向になります。

とくに下肢から牽引しながら、ゆっくりと脊柱管を広げるマニピュレーション操作を施します。

効果の予測

脊柱管狭窄症は、不可逆的な骨性因子に加えて、可逆的な靭帯や椎間関節包や馬尾部の循環障害によって発現する疾患です。そのため一般の医学的な理解でも、保存療法が第一選択とされています。

当治療院での適応と限界

高齢化の進行により、脊柱管狭窄症が増加しています。当治療院にも、病院で診断を受けられた後、来院される方がおいでになります。

神経根型の脊柱管狭窄症は、施術により、ある程度の症状の緩和が期待できるかもしれません。ただし、その坐骨神経根症状が、下肢に強いシビレ感を伴うものなら、施術効果の持続は少ないでしょう。馬尾神経症状を呈するものは、骨性因子の関与が大きいため、治療院レベルでは緩解困難と理解します。

脊柱管狭窄症を発現する因子には、可逆的な因子と不可逆的な因子があります。可逆的な因子のなかには、治療院での施術により改善が見込めるものが、いくつかあります。とくに、好発高位であるL4-L5椎間関節に運動操作を施しながら、過緊張をゆるめ、血液循環を促すことは可能です。

脊柱管狭窄症は、医学的な見解からも、保存療法が第一選択とされています。ただし、脊柱管を狭窄する病態のすべてが、保存的に施療が可能であるとは限りません。その限界を心得ながら、慎重に施術の適応を鑑別しています。

付 記

狭窄部位と分類

脊柱管狭窄症は、狭窄をおこす部位によって「神経根型」「馬尾型」「混合型」の3つに分けられます。

1) 神経根型

椎間関節の肥大 (球状肥大)によって、脊柱管の外側陥凹部に狭窄が生じます。こうして神経根が圧迫刺激を受けるのが「神経根型」です。多くが、L4‐L5間の椎間関節でおこり、L5神経根症状を表します。坐骨神経痛を主症状とします。

殿部から下肢の疼痛やシビレによって歩けなくなります。片側の症状が多くなりますが、両側に出現することもあります。痛みの範囲は、障害された神経根が支配する領域に限定されます。

2) 馬尾型

骨性因子により脊柱管の正中部で狭小化して、馬尾神経が圧迫刺激を受けています。神経根型と違って痛みではなく、下肢の両側に出現する異常感覚が主体となります。多くが、L4‐L5間の椎間関節高位でおこり、L5神経以下の多根性の症状が現れます。

シビレ感、灼熱感、蟻走感、冷感などの異常知覚、脱力感により歩行が困難となります。病態が進行すると筋力低下、膀胱・直腸障害、会陰部の熱感などを訴えます。

3) 混合型

神経根型と馬尾型の両方が合併しています。単一神経根の疼痛と多根性の異常感覚・下肢脱力感により、歩行が困難となります。

椎間関節の変形、関節突起の肥大といった骨性因子に、椎間板ヘルニア、黄色靭帯・後縦靭帯の緊張や肥厚などが加わって、症状の発現を促進させています。

脊柱管狭窄症は、いくつもの因子が重なり合って発症するため、組み合わさる因子や強さによって異なる病態をみます。

加齢に伴う椎間関節や椎間板の変性によって、腰椎は不安定となります。その代償として、黄色靭帯や後縦靭帯には過剰な負荷がかかります。こうして靭帯に緊張や肥厚が発現し、脊柱管を狭小化します。

さらに、腰椎の不安定性は、骨棘の形成や関節の肥厚といった骨性の変化も助長します。中年以降の女性には、腰椎変性すべり症が生じやすいことがわかっています。変性すべり症による狭窄症は、重症化しやすいといわれます。腰椎分離すべり症に起因する狭窄は、分離部の骨棘形成、椎間孔の変形、下位椎体後縁による圧迫などで、保存療法に抵抗することがあるかもしれません。

狭小化した脊柱管では、小さな椎間板の突出でも症状の発現・増悪をみます。また、重労働で腰に無理をかけていた方、若いときひどく腰を痛めた方なども、加齢によって変形性脊椎症がおこり、狭窄症へと進行しやすいとされます。