腰椎すべり症・施術方針

腰椎すべり症とは

腰椎すべり症は、腰椎が不安定になり、正常な位置から前方に移動したことを起因とする腰殿部痛や下肢痛のことです。腰椎すべり症は、変形性腰椎症と同様に、筋肉、椎間関節、椎間板などの変性が重なって腰痛を発症させています。

腰椎が不安定になる原因として、関節突起間部が分離したことによる「分離性すべり症」と、分離は伴わないが椎間関節や椎間板の変性による「変性性すべり症」があります。

加齢による椎間板や椎間関節の変性、靭帯のたるみ、筋肉の弱化により、腰椎が不安定になって発症する変性性すべり症は、高齢化により増加しているといわれます。詳細は「腰椎すべり症・原因症状」を参照ください。


施術の方針

腰椎すべり症でみられる変化には、変形性腰椎症と同様に「可逆的な因子」「不可逆的な因子」があります。

・ 可逆的な因子には、神経根炎、関節機能の低下、過緊張や疲労、周囲組織の浮腫など

・ 不可逆的な因子には、すべり現象、アラインメント異常・腰椎全体の歪み、椎間板の変性、椎間関節の変性など

当治療院がおこなうマニピュレーション・矯正刺激は、腰椎のすべり現象という構造的な変化を、元の状態に戻すことを目指すものではありません。

もしも、腰椎のすべり現象が、単独で腰痛を発現しているなら、保存療法によって痛みを緩解させることは難しいでしょう。しかし、中高年にみられる腰椎すべり症は、過緊張、疲労、循環障害、炎症、浮腫など、可逆的な因子も重なり合って腰痛を発症しています。

施術は、変形性腰椎症の一種としておこないます。構造的な変化を目安としながら、可逆的な因子を改善することを基本とします。可逆的な因子を改善することで、腰椎のすべり現象がみられても、ある程度の痛みは軽減できるものと考えます。

当治療院では、以下を重視して施術をおこないます。

1.腰椎カーブを減少させる方向への「椎間関節の操作」

2.腰椎カーブを減少させる方向への「仙骨からの矯正刺激」

3.椎間腔を広げる方向への「下肢からの牽引操作」


1.椎間関節の操作

変性性すべり症の場合、腰椎や椎間板の変性に加えて、靭帯や筋肉がたるんで不安定性が増し、腰椎全体が前方にすべり出します。とくに、第4腰椎の前方へのすべり出しが認められます。

L3-L4を中心に腰を丸めるようにして、腰椎カーブを減少させる方向に静かにストレッチを持続しながら、最後にエンドフィールで軽くスラストを加えます。

すべり部に一致して階段状の段差やへこみを触れる場合は、この変化を目安として、歪みを整える方向に同様の操作を施します。


2.仙骨からの矯正

下部腰椎にすべり現象がおこると、腰の反り返りが強くなります。すると、椎間関節面が過剰に刺激されて痛みを誘発します。また、椎間板にも無理な力が加わり、変性を助長します。

前方にすべった腰椎をひねり出す方向へ、仙骨から矯正刺激を施します。また、S3(仙骨の下方)から、仙骨底を起こして腰仙角が小さくなる方向にポンピングを繰り返します。

これは、一撃で「骨のズレが治す、腰椎を正常な位置に戻す」という操作ではありません。過緊張の緩和と関節の機能回復を促すことで、侵害刺激の軽減を主な目的としています。


3.下肢からの牽引操作

腰椎が不安定になると、協調して働いている骨盤-股関節-膝関節にも無理が波及します。そこで、腰椎の反り返りを減らす方向に導くように、下肢から牽引操作をおこないます。

腰椎前弯を減らすように、仰臥位で両足首をもって下肢を拳上‐牽引します。そして、左右から骨盤(上前腸骨棘)をゆすりながら、仙骨底を後屈する方向に運動刺激を施します。

また、下肢からマニピュレーション操作を施すことで、全体の調和を整えながら、椎間関節や周辺組織にも良い刺激効果を及ぼしていきます。


注意を要する手技

椎間関節部の動き(機能)を増大させることで、逆に不安定性が増して、すべり症を助長する危険があります。そのため、すべり現象が触知できる責任高位でも、直接的に関節をゆるめることはしません。

また、変形性腰椎症と異なる点として、脊柱カーブが減少していても、後方から前方への押圧操作はおこないません。さらには、下部腰椎‐骨盤‐股関節の協調運動に失調がみられても、大きく動かすような下肢からの操作はいたしません。


施術への心得

当治療院がおこなうマニピュレーション・矯正刺激は、すべり出した腰椎の配列を元の位置にもどすものではありません。しかし、可逆的な要因を改善していくことで、症状が緩解することは可能でしょう。お試しいただく価値は十分にあると思います。

ただし、すべり現象があることから、以下を心得ながら施術にあたります。

1.焦点を絞った施術

2.継続した加療と運動

3.筋力強化のススメ


1.焦点を絞った施術

すべり症のように腰椎の不安定性が増しているときは、急いで筋肉をゆるめたり関節の動きを高めたりしてはいけません。腰椎の不安定性を増して、すべり現象を助長する恐れがあります。

腰椎の不安定性を悪化させずに可逆的な問題の改善をはかるためにも、下部腰椎-仙骨に集中してマニピュレーション・矯正刺激を施していきます。

加齢に伴う腰椎すべり症の患者さんには、肩こりや膝関節痛など、腰痛以外にも様々な症状がみられます。しかし、いろいろと施術を広げていくと、治療刺激の過多になります。腰椎すべり症の場合は、下部腰椎-仙骨に焦点を絞った施術の方が、功を奏すると思われます。


2.継続した加療と運動

週1~2回の施術を継続して受けていただきながら、腰椎の不安定性を助長しないよう徐々に治療刺激を増していきます。慢性化した炎症が和らぐのに1か月、腰椎の関節機能が促されるのに1か月として、2か月を一つの目安に施術をプログラムします。

経過の長い複合的な病態ゆえに、過緊張の緩和と炎症の軽減を促すためには、根気よく施術を継続する必要があります。また、継続した施術に加えて、腰椎カーブの反り返りを減らしたり筋力を強くしたりするホームエクササイズもおこなうことで、望ましい効果は期待できると考えます。


3.筋力強化のススメ

症状の改善をはかりながら時期をみて、不安定な腰椎を保持するための「筋力強化」として、ホームエクササイズをお勧めします。健康度をはかるバロメーターとして筋力や姿勢に注目しながら、弱化した腰部の機能回復や強化を促します。

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