筋筋膜性腰痛

症状・原因

筋筋膜性腰痛とは、筋肉や筋膜に主な原因がある腰痛のことです。急性の腰痛(ギックリ腰)、また慢性化した腰痛の原因として重視されています。

筋筋膜性腰痛は、急性期でも慢性期でも、同じ部位に痛みが生じます。ただし、痛みの性質は異なります。

急性の筋筋膜性腰痛

急性の筋筋膜性腰痛は、いわゆるギックリ腰として発症します。重いものを持ったり、急に体をひねったりしたとき、ギックリ腰として発症します。

筋肉や筋膜に強い力が作用したり、過剰に伸ばされたりして損傷されます。この損傷に基づく炎症が病態の基礎となり、筋筋膜性腰痛が生じます。

症状の特徴として、

・ 片側性の腰痛が多くなります。

・ 障害された部位には、著明な圧痛が現れます。

・ 最初のうちは、痛みはひどくなくかもしれません。

・ 時間の経過とともに炎症が広がり、徐々に痛みも強くなります。

・ 急性症では、局所の熱感や腫脹がみられます。

・ 障害された筋肉を伸ばすと痛みが増強するので、健側凸の側弯姿勢となります。

慢性化した筋筋膜性腰痛

過緊張を持続する様々な原因によって慢性期の筋筋膜性腰痛はおこります。たとえば、

急性の筋筋膜性腰痛により、炎症に基づく循環障害がつくられます。

→ 循環障害が慢性化するなかで、結合組織が増殖したり筋膜が肥厚したりします。

→ 背腰筋がオーバーワークの状態に陥っても、異常な緊張や攣縮がおこります。

→ 筋肉の異常な緊張や攣縮は、血液循環を阻害します。

→ そして、酸素が不足したり疲労物質が蓄積したりして、慢性化した筋肉痛が現れます。

慢性化した筋肉痛による過緊張や筋肉の疲労が、さらなる痛みをつくるといった「痛みの悪循環」を形成します。

症状の特徴として、

・ 急性期と同様の筋肉部に、局在性の著明な圧痛や硬結が認められます。

・ ところが押圧したり伸張したりしても、急性期ほど激しい痛みは現れません。

・ むしろ「痛いけど気持ちいい」と感じます。

・ 動作に伴う激痛というよりは、常に鈍痛があるという状態です。

・ 熱感はなく、循環障害により周囲よりも冷たくなります。

施術のポイント

当治療院がおこなう関節操作・矯正を中心とする施術は、慢性期の筋筋膜性腰痛に適しています。そこで、慢性期の筋筋膜性腰痛への施術ポイントをご案内いたします。

急性期の筋筋膜性腰痛への施術は、ぎっくり腰(急性腰痛症)を参照ください。

筋筋膜性腰痛がおこりやすいのは脊柱起立筋です。脊柱起立筋は、腰背部を縦走する長大な筋群で、最長筋や腸肋筋に大別されます。疼痛部位は、骨盤 (ヤコビー線)より上方に多くみられます。

腰椎の反り返りを緩和

正常な脊柱は、適度なS字カーブをつくり、かかる負荷を分散しています。ところが、痛みによって腰部の筋肉が緊張した状態が続くと、腰椎の反り返りが強くなります。この過緊張状態が、慢性化した筋筋膜性腰痛をつくります。

腰部のストレッチ、軽く矯正刺激

痛みの原因が、筋肉の炎症から機能障害に移行したころより、積極的に操作・矯正を施していきます。

緊張した腰部脊柱起立筋をゆるめて、正常な腰椎カーブをつくるように、腰椎-骨盤から持続した回旋+ストレッチ操作をおこないます。さらに、軽い矯正刺激を細かく加えていく場合もあります。

筋肉を支配する神経へ抑制刺激

緊張が緩和して腰椎の動きが増大すると、その運動刺激が痛みの感覚を伝える神経の働きを抑制して、腰痛が緩和していきます。

過剰に緊張する筋肉を支配している神経をたどり、その神経と関連する脊柱高位に操作・矯正刺激を施しながら、侵害刺激の軽減をはかります。

とくに脊柱起立筋を支配する脊髄神経の後枝を標的に、脊柱の歪み・固着を整える方向に矯正刺激を加えます。

血液循環も促して

腰椎を操作しながら、脊柱の近くで深部にある短背筋(半棘筋・多裂筋・回旋筋)を標的に、マニピュレーション操作をおこないます。深部から筋肉のコリ感をゆるめて動きを増大することで、血液循環も促され、障害組織の回復と炎症の鎮静が促進されます。

筋肉の損傷による炎症が強いときは、押しても伸ばしても痛みが増悪します。その間は皮膚刺激により、痛みの抑制をはかります。

また、筋膜はコラーゲン線維のメッシュ構造により、伸び縮みすることができます。ところが、「筋疲労」に伴ってメッシュ構造が粗くなったり、密になったりします。このような筋膜の変化が、筋肉のコリとして触知されます。とくに、負担のかかりやすい筋腱接合部でコリが好発します。

痛みをつくる筋肉へ

異常な緊張状態が持続すると、収縮した筋肉はうまく弛緩する(ゆるめる)ことができなくなります。慢性化した筋筋膜性腰痛では、腰部の重苦しい痛みにくわえて、「伸びにくい」「曲がりにくい」といった可動性の悪さが伴います。

そこで、異常な緊張で収縮した筋の緊張をゆるめ、低下した運動機能の回復を促すように筋膜や腱を伸張します。とくに、脊柱起立筋や殿筋のコリをゆるめるように鍼刺激を加えながら、押圧・伸展を加えながら関節操作を施します。

好発部位として

腰椎棘突起の外線部に痛みや圧痛があるときは、多裂筋、回旋筋などの障害が推測されます。側腹部の近くに痛みや圧痛があるときは、外腹斜筋の障害が考えられます。お尻や骨盤(上後腸骨棘外緑部)に痛みが現れたときは、上殿筋や中殿筋が障害されているかもしれません。

主に円皮鍼やキネシオテープを用います。筋肉には、刺激を加えると痛みが再現するツボ(トリガーポイント)があります。このツボに治療刺激を施しながら、表在性の痛みの抑制をはかります。

効果の予測

痛みの原因が、単純な筋肉の緊張なら、数回の施術で緩和することが期待できます。ただし、患った期間の長い病態は、筋肉のコリがゆるむまでに、ある程度の時間を必要とします。また、一度に緊張をゆるめようとすると、逆に不安定性が増して症状が悪化する危険があります。

腰部の筋肉が防衛的に収縮しているのは、何らかの理由があるからです。つまり、筋肉を固くすることで不要な動きを抑制し、障害された組織に過剰な負荷をかけないようにしているのかもしれません。そのため、一度に緊張をゆるめようとすると、不安定性が増して症状を悪化させる危険があります。そのため、最低でも4回に分けて継続して施術を受けていただくことをお勧めしています。

また、施術するツボも多くとらない方が、かえって経過が良いようです。一般的には、ポイントを絞った短めの施術を根気よくおこなっていくと、効果は高いように感じます。

付 記

複合症状への移行に

筋筋膜性腰痛が慢性化するなかで、緊張度の増した腰椎は、反り返りが強くなります。腰椎の反り返りが強くなることで、椎間関節に負荷がかかります。やがて、椎間関節性腰痛も混合した症状が現れます。椎間関節性腰痛を併発すると、下部腰椎‐殿部‐股関節周囲にも痛みが放散します。

また、椎間関節や椎間板の機能が低下すると、腰部が不安定になります。その不安定な腰部を支えようと、筋肉は過剰な緊張を強いられます。こうして、筋筋膜性腰痛も増悪します。筋筋膜性腰痛は、筋肉の慢性化したコリ感にだけでなく、椎間関節や椎間板も関連しながら痛みをつくります。