寝違え (急性疼痛性頚部拘縮)

症状・原因

寝違えとは、頚部の筋肉につくられた急性炎症による激痛と、その痛みによる運動制限を総称するものです。急性疼痛性頚部拘縮、急性頚部筋々膜症ともいいます。

寝違えの多くは、不自然な姿勢で眠り続けたときにおこります。首から肩、背中にかけて強い痛みが急におこり、その痛みで首を動かすことが制限されます。

1.朝、眼がさめたとき、首が痛くなっている

2.ある一定の姿勢をとった際、痛みがはしる

3.動作による激痛のため、首の動き(可動域)に制限がある

4.首の筋肉に過剰な緊張、圧痛、しこり・コリがある

5.後頭部、項部、肩甲上部に痛みが広がる

6.仕事をしていると、次第に寝違えた感じがしてくることもある

※  上肢・手に痛みやシビレを感じることがあっても、他覚的な神経異常所見はないといいます。

長時間の不自然な姿勢により

疲労などにより泥酔すると、不自然な姿勢のまま眠り続けてしまうことがあります。すると、首の筋肉に負荷が蓄積し、組織が損傷されて炎症が生じます。

炎症がつくられると、小さな刺激にも過敏に反応するようになります。深部にある頚椎際の小さな筋肉は、歪みの影響を大きく受けるので損傷されやすくなります。

刺激に過敏な状態で首を動かそうと、意識のハッキリしない寝ぼけたなか筋肉に力を入れたとき、誤作動をおこして痙攣することがあります。朝方に足がつる、こむら返り(腓腹筋痙攣)と同じです。

筋肉を収縮させると痛い

痙攣して異常に収縮した筋肉には、圧痛点やしこりがみられます。その筋肉を強く収縮させる動作は、頚椎の周辺に激しい痛みを発生させます。そのため、筋肉を収縮させないように防衛反応として、首を健側に少し傾ける姿勢となります。

時間とともに炎症が広がると、痛みと過緊張を悪化させます。運動制限のみられる場合、頭痛、背中の痛み、手のシビレを伴うことがあります。また、悪い姿勢で仕事をしていても、徐々に寝違えと同じような感じが出現することがあります。

施術のポイント

痙攣して異常に収縮した筋肉には、圧痛点やしこりがみられます。この反応に持続的な押圧刺激を加えながら、痙攣と痛みを抑制します。そして、軽く牽引刺激をおこなって過緊張の緩和を促します。

痛みが軽減したころからは、可動域の回復を促すように、ゆるやかな関節操作・運動をおこないます。

基本操作・矯正(カイロプラクティック)

最初の施術として

頚椎の痛みは、大部分が脊髄神経後枝の興奮によって生じています。その反応は、頚椎棘突起の際(夾脊穴)にみられます。とくに、頚椎前彎の中央にあたるC5前後には、圧痛が出現しやすくなります。

後枝痛の緩和を目的として、C5を中心に頚椎棘突起を擦るように伸張圧を施します。

痙攣した筋肉を収縮させると激痛が走るので、無意識にも首を健側に少し傾ける姿勢をしているかもしれません。この首を傾けている方向に、ゆっくりとストレッチをおこないます。

刺激に過敏な状態なので、急激な刺激の入力はさけ、施術も短時間とします。

1.持続的な圧刺激

痛みのあるとき、無意識に患部近くを強く押さえているものです。圧迫刺激を伝える神経の働きが、それよりも細い痛覚を伝える神経の働きを抑制するため、痛みが和らぎます。

また、弱い刺激は神経機能を惹起し、強い刺激は神経機能を抑制します。痙攣して過剰に収縮する筋肉に、強めの圧迫刺激を施すことで、興奮状態が抑制されて過緊張が緩和します。

強めとは、強くという意味ではありません。過敏な状態では、小さな刺激も強めに感じるように、抑制的に作用します。

2.軽い牽引刺激

痛みが少し和らげば、痙攣して異常に収縮した筋肉にストレッチを施します。

頚椎の際にある圧痛点やしこりに圧刺激を加えて操作をおこない、ゆっくりと元に戻します。これを繰り返していくと痙攣は治まり、過緊張の緩和とともに痛みも軽減していきます。

3.関節可動域の回復

痙攣と痛みが緩和すれば、かたく拘縮した頚部をゆるめるように、軽い揉捏(=強擦・皮膚刺激)を頚椎全体に施します。さらに、深部から可動域の制限を解放するように、関節面を開きながら伸張していきます。

頚椎の横突起とその数椎上の椎弓根を結んでいる小さな筋肉(回旋筋・多裂筋・半棘筋)が、寝違いを好発します。疼痛が増悪する運動とは逆方向に、少しずつストレッチを加えていきます。これら深部の筋肉は、小さな動作にも大きく伸張されるので、関節面への操作で十分な効果をみます。

迷走神経反射による脳貧血にも注意しながら、少しずつ治療刺激を施します。

トリガーポイントのほか、脊髄神経後枝の興奮を抑制する目的で、頚椎棘突起の際(夾脊穴)に円皮鍼を施します。また、寝違えのツボとされる「落枕」を円皮鍼で刺激することもあります。

寝違えの痛みが、首肩から背中へと広がっていることがあります。そのときは、圧痛点やしこりに鍼刺激を加えて興奮性を抑制します。

刺激に過敏な状態のときは、キネシオテープをもちいます。刺激過多にならず、効果も高いかもしれません。

効果の予測

振幅の短い瞬間的な矯正刺激は、最初の施術ではおこないません。痙攣・過緊張を抑制することを第一の目的とします。一般には、2回ほどの施術で、およその痛みが軽減できるものと予想します。

ただし、痛みが治まったころが半治りです

痛みが軽減して可動域が回復したなら、次は予防の段階として、寝違えをつくる根本にある原因を癒すように、積極的に関節操作・矯正を施していくことをお勧めします。

頑固な肩コリが慢性化しているときは、マッサージを加えながら、制限された関節可動域の回復を促す運動操作をおこなうことがあります。

しかし、「痛い痛い」といって患部をもみほぐす人はいません

筋肉の痙攣や首の痛みが緩和したころを見計らって、かたく拘縮した筋肉をゆるめるように軽くマッサージを施します(詳細:急性期の痛みに「もむ」は不適当です)。

付 記

寝違えは「きっかけであって、原因でないことが多い。すでに、何らかの理由で、痛みが発症する臨界点に達していた」(増田,2001)

寝違えの根本には、別の原因が隠れているのです。この根本原因として、以下のものが考えられます。

1.頭部前傾の悪い姿勢

側面からみて、耳の穴が肩よりも前にでている頭部前傾の姿勢は、重い頭によって首の後ろの筋肉が、常に伸張ストレスを受けています。その一方で首の前の筋肉は、圧迫によるストレスを受けています。こうしたストレスが、首肩に慢性化したコリ感をつくります(増田,2001)。

慢性化した首肩コリよる過緊張・循環障害は、寝違えの引き金となります。とくに、睡眠中に体が冷えると血液循環が悪くなると、痙攣がおきやすくなります。過緊張と動きの制限により、小さな刺激でも過敏に痛みとして感じるようになります。

2.頚椎の加齢変化

50歳以上になれば生理的な現象として、頚椎や軟部組織に退行性変性がみられるようになります。椎間板の変性から始まり、頚椎は不安定になって過剰な緊張をつくります。この過緊張は筋肉を固くし、血液循環を悪くしながら炎症をつくり、痛み刺激に敏感な状態となります。

さらに、頚椎にはルシュカ関節という特殊な関節が神経根出口を保護しています。このルシュカ関節は加齢変化をおこしやすく、骨棘を形成して周囲の緊張度を高めることがあります。

ひどい寝違え、度々の寝違えは、頚椎症(変形性頚椎症)が関係しているかもしれません。

3.関連痛による過緊張

頚部にみる炎症性の疼痛のなかには、のどや鼻の病気が潜んでいます(似田,2015)。また、以下の理由からも、首に痛みが生じることが指摘されています(増田,2001)。

1) 顎関節症、虫歯、副鼻腔炎による関連痛が、三叉神経を介して首に現れる

2) 内臓の問題によって迷走神経が過度に緊張すると、関連痛が首に発現する

3) 横隔膜の過緊張による刺激が、横隔神経のC3-5を侵害して痛みをつくる


増田裕(2001)くびの痛み.カイロプラクティック神経学(7).Spinal Column,107:p.6-8.

似田敦(2015)2 頸腕痛.現代鍼灸臨床Ⅰ,271222.