いわゆる肩こり

症状・原因

筋肉は筋膜に包まれています。筋膜はコラーゲン線維のメッシュ構造により、伸びたり縮んだりすることができます。

ところが、筋肉が疲労するなかで筋膜のメッシュ構造に、粗くなったり密になったりする部位が生じてきます。この筋膜の変化が、押圧すると痛いコリとして触れるようになります。

肩こりとして触れる“こり”は、筋膜の変化したところという意見があります。

筋膜の変化≠肩こりという状態

首肩の筋肉が固くなり、しこっている状態と「肩コリ」は、同一ではありません。肩コリとは自覚症状であり、他人には推察することしかできません。

肩がガチガチにこっていても、肩コリを感じていない人がいます。逆に、肩の筋肉がやわらかい人でも、強い肩コリに苦しむ人がいます。

他人が触れる筋肉のコリと、肩こりという自覚は別もの

肩コリは、緊張した状態が持続した結果、刺激に過敏に反応して、小さなコリでも強く苦しく感じています。そのため、いくら肩のコリをほぐしても、根本にある過剰な緊張が持続しているので、すぐにコリ感がもどるのです。


肩の筋肉を支配している神経の過剰な緊張度(トーン)こそ、肩こりの根本原因といえます。

施術のポイント

肩の筋肉がこる原因をつきとめて、根本から治したい方にはお勧めです。まずは、頚椎に牽引・関節操作しながら、可動性の増大を促します。そして、肩コリの責任高位に矯正刺激を施して、緊張度を軽減していきます。

頚椎-胸椎-肩甲骨-鎖骨は、協調して働いています。肩甲骨の可動性を高めるように、肩関節-上腕から運動操作をおこないます。また、不良姿勢を整える方向にも操作・矯正刺激を施します。

基本操作・矯正(カイロプラクティック)

頚椎への牽引・関節操作

頭痛のない肩コリでは、下部頚椎から上部胸椎を中心として、歪みを整える方向に操作・矯正を施しながら、頚椎全体の機能改善を促します。

「脊椎の中で頸椎は最も可動域が大きく、同時に最も弱い部位である」(マンフレッド・ハンス,1997,p.25)

そこで、頚椎へ矯正刺激を施す前には、準備操作として、頚椎関節面をゆるめるように牽引・関節操作をおこないます。

また、C5~C8とT h 1神経の前枝である腕神経叢への負荷を軽減する目的で、斜角筋から僧帽筋をゆるめるように関節操作・ストレッチを施します。

責任高位に矯正刺激

肩コリの責任高位として、日常動作で負荷が大きく、椎間板障害がおこりやすいC5~C7を中心に、歪み・固着を整える方向に矯正刺激を施しています。

この操作・矯正は、頚椎機能の改善をはかるだけでなく、感覚をつかさどる神経へ治療刺激を入力する効果もあり、緊張度の緩和も得られます。

また、頭痛のない肩コリでも、上部頚椎の特殊性を考慮します。そして、上部頚椎にみるエンドフィール(可動域の最終でみる停止感・なめらかさ)や左右差を整えながら、緊張度の緩和・均衡をはかるように矯正刺激を施します。

前頚部-鎖骨部の狭小

頭部前傾姿勢・猫背などは、前頚部-鎖骨部を狭くして侵害刺激をつくります。そこで、鎖骨-肩関節前面に押圧・操作を加えながら、正しい姿勢の再学習を促します。

また、前頚部-鎖骨部が狭小化すると、腕神経叢・頚部交感神経も刺激を受け、肩コリに随伴して各種の症状がみられます。そのような複合した症状には、とくに効果が期待できます。

姿勢全体をみて

頚椎の歪み・固着(アライメントの異常)による肩コリの場合、頭部前傾姿勢で頚椎カーブが減少し、顎がやや上がっている人が多いように見受けます。緊張を強いる刺激として、不良姿勢の改善を促します。

頭部前傾姿勢を改善するなら、頚椎アライメントだけでなく、姿勢全体を注視すべきです。

体幹の土台となる骨盤の傾きは、姿勢に大きく影響します。肩コリなのに腰-骨盤から歪み・固着を検査するのは、主に姿勢全体をみての事とご理解ください。

筋肉の緊張をはかるセンサーが不良で、その情報を中枢に伝達しづらい状態が続いています。そこで、緊張度をはかるセンサー部位として、表在性の圧痛点(トリガーポイント)に円皮鍼を施し、興奮の抑制をはかります。

圧痛点には円皮鍼、症状により鍼療法を、

脊柱の歪みを整える方向に矯正刺激を施すことで、歪みのなかに隠れていたコリが、表面に浮き出てきます。とくに筋肉のコリ感が著しい場合は、表面に浮き出てきたコリ(反応)をゆるめるよう鍼療法をおこなうことがあります。

肩甲骨内上方のつっぱり感

頭部前傾姿勢による伸張ストレスは、肩甲挙筋を緊張させ、肩甲骨内上方につっぱり感をつくります。また、腕神経叢からつながる肩甲背神経は、肩甲挙筋を支配しています。そのため、C5の歪み・固着により生じた過剰な刺激が、肩甲挙筋の緊張となって現れます。

肩甲背神経の興奮を緩和する目的で、C5に操作・矯正を施します。それに加えて、肩甲挙筋の緊張をゆるめるように、下部頚椎から肩甲骨内上角にかけて鍼刺激を加えます。

肩甲間部のコリ感

腕神経叢からつながる肩甲背神経は、肩甲間部にある菱形筋を支配します。そのため、C5の歪み・固着により生じた過剰な刺激が、肩甲間部のコリ感となって現れます。C5への操作・矯正に加えて、菱形筋に鍼刺激を施しながら緊張感を解放します。

肩甲骨裏面のコリ感

肩甲間部に強いコリがあるとき、肩甲骨裏面と肋骨の間で可動性が低下します。肩甲下筋・前鋸筋をゆるめ、左右のバランスを整える意味で、肩関節から肩甲骨-鎖骨を動可+鍼で刺激していきます。

付 記

筋肉は、収縮することを仕事としています。中枢(脳・脊髄)から「縮みなさい」という指令が一度伝わると、一度収縮します。指令が続くだけ収縮し、指令が止まると筋肉はゆるみます。

また、筋肉はゆっくり伸ばされると、「ゆるめなさい」という情報を中枢に伝えます。筋肉が収縮するときは、その拮抗筋に「ゆるみなさい」という指令が中枢より伝えられます。

筋肉には緊張度をはかるセンサーがあります。そして、筋肉の状態を中枢に伝えながら、正常な緊張度を保っています。

肩コリには、3つの異常が考えられます。

1.筋肉に緊張を強いる刺激が、常に発せられている。

2.筋肉と中枢を結ぶ神経経路の途中に、伝達を阻害している障害がある

3.筋肉内にある緊張度をはかるセンサーが、うまく働いていない

1.緊張を強いる刺激

首から肩の筋肉を支配する神経に、常に過剰な緊張をつくる要因は、すべて肩コリの原因となります。そのため、肩コリの原因は、以下のように多岐にわたります。

1) 肩の筋肉を酷使する、同じ姿勢をつづける、手先の細かな作業

2) 精神的なストレス

3) 心臓病(狭心症・心筋梗塞)、高血圧、肝臓障害、胃腸障害、肺の病気

4) 眼精疲労

5) 顎関節症(噛み合せの悪さ)

6) 耳鳴り、めまい、蓄膿症

7) 生理にともなう肩コリ   など

2.神経伝達を阻害する障害

頚椎は、脊髄を通す“管”や末梢にのびる神経が出入りする“孔”を構成しています。そのうえ重い頭を支えながら、大きな動きも担っています。そのため悪い姿勢が持続すると、過剰な刺激が生じて神経の働き(緊張度)を阻害します。

大きく動く頚椎と肋骨により動きが制限された胸椎の間で、下部頚椎は負荷が大きく、障害を受けやすくなります。C5~C8とT1神経の前枝は、腕神経叢を形成しています。なかなか良くならない、難治性の肩コリは、この高位で神経の働きが阻害されているかもしれません。

※  肩甲上部の僧帽筋は、C1~C4神経の前枝で構成される頚神経叢により運動支配されています。この高位での問題は、「緊張型頭痛」を参照ください。

3.緊張度をはかるセンサーの不良

緊張を強いられた状態が続くと、小さな刺激にも痛みを誘発するトリガーポイントが形成されます。逆に、緊張下で知覚が鈍くなり、押圧すると痛いが気持ち良いというツボもつくられます。

筋肉の緊張をはかるセンサーが不良となり、正しい情報を中枢に伝達できない状態が続くと、過剰な緊張をゆるめることができなくなります。こうして緊張下のもとで痛み刺激に過敏となり、血液循環は滞って組織の変性を助長するなかで、肩コリは形成されていきます。

疲労・過緊張は、全身いたるところの筋肉で起こり得ます。しかし、肩コリのような不快な自覚症状は、他の部位ではみられません。肩コリは、頭の位置の変位・頭の動きが制限された結果であり、後頚部には感覚をつかさどる神経が、たくさん通っているという特殊性が影響しているのでしょう。

「上部頸椎は固有感覚に対する末梢での舵取り的な役割をもち、すべての筋組織の緊張度に影響を及ぼす」。「上部頸椎の機能障害は疼痛に影響を及ぼす」

(マンフレッド・ハンス,1997,p.26-27)

「後頭下筋の役割は、頭を支持することに加え、重力に対する頭位の位置関係を判断するセンサーがあり、それを中枢に伝達することで平衡感覚を判断する一つの情報源となる」。「後頭下筋の緊張時(とくに緊張に左右差がある場合)、動揺性めまい(=フラフラ感)が生じることがある」

(似田,2015,p.13)

頭痛がなくても、上部頚椎にみるエンドフィール(可動域の最終でみる停止感・なめらかさ)や左右差を整えながら、緊張度の緩和・均衡をはかる必要があります。

頚椎の歪み・固着(アライメントの異常)による肩コリの場合、頭部前傾姿勢で頚椎カーブが減少し、顎がやや上がっている人が多いように見受けます。頭部前傾姿勢による伸張ストレスは、肩甲挙筋を緊張させ、肩甲骨内上方につっぱり感をつくります。

また、腕神経叢からつながる肩甲背神経は、肩甲挙筋を支配しています。そのため、C5の歪み・固着により生じた過剰な刺激が、肩甲挙筋の緊張となって現れます。さらに肩甲背神経は、肩甲間部にある菱形筋を支配するので、肩甲間部のコリ感となって現れます。

「日頃は首や肩がこって、頭が絞めつけられるように重苦しいが、こじれて酷くなるとズキズキした拍動性の頭痛が加わり、吐き気も伴う」という訴えが多くあります。このように、あるときは緊張型頭痛あるときは片頭痛と、両方の頭痛をもつタイプは「混合性頭痛」といわれます。

この2つの頭痛に共通するのは「肩こり」です。頭痛もちの方は、後頭部から首筋のコリに過敏となり、痛みとして感じています。そして、この軽い状態が緊張型頭痛で、ひどい状態が片頭痛だといえます。

筋肉のコリを主体とする「いわゆる頭痛もちの頭痛」は、当治療院の施療が有効と思われます。頭痛のある肩コリは、「緊張型頭痛」「片頭痛」を参照ください。


マンフレッド エダー・ハンス ティルシャー 著,中川貴雄・野呂瀬紘未 訳(1997)カイロプラクティック・セラピー診断と治療.科学新聞社.

似田敦(2015)1 頭痛.現代鍼灸臨床Ⅰ,271222.