片頭痛

症状・原因

片頭痛は、何らかの要因によって頭の血管が拡張し、血管のまわりの神経が刺激されることでおこる頭痛です。

片頭痛の発作期は、血管の周囲に炎症がともなうため、ズキンズキンと脈打つようなひどい頭痛となります。とくに、こめかみにある側頭動脈が拡張して神経を刺激しているので、片側のこめかみから目のあたりに頭痛がおこります。頭痛がおこる側は、人によって異なり、両側が痛いこともあります。

片頭痛を引きおこす要因を、主として「三叉神経血管説」「頭部前傾の悪い姿勢」から推察しています。

三叉神経血管説

片頭痛は、繰り返し発作的におこる血管性頭痛で、血管を拡張したり過敏にしたりする原因の一つとして、三叉神経が深く関与しているといいます。

三叉神経は、頭蓋内の血管に分布しています。

→ 何らかの刺激を受けて、三叉神経が興奮する

→ 興奮した三叉神経終末から、血管拡張物質が放出される

→ 血管が拡張し、炎症が引き起こされる

→ 炎症反応が、次々に血管を広がる

→ 血管の拡張と炎症により、 拍動性の頭痛が出現する

→ これらの刺激が興奮となり、脳に伝えられる

→ 悪心・嘔吐など、随伴症状が引き起こされる

このような機序により、三叉神経が刺激を受けて血管拡張物質が放出され、血管の拡張と炎症により拍動性の頭痛が出現します。

頭部前傾の悪い姿勢

片頭痛の原因の一つとして、三叉神経が関係しています。三叉神経の脊髄路核は、C2まで下降して対側の視床に上向してシナプスしているといいます(増田,2001)。

上部頚椎(後頭骨-第1頚椎-第2頚椎)でつくられる侵害刺激は、三叉神経を刺激して片頭痛を引き起こす可能性があります。また、上部頚椎の歪み・固着が緊張型頭痛をとなり、頭頂部において大後頭神経を介して三叉神経第Ⅰ枝(眼神経)を刺激します。

頭部前傾の悪い姿勢が上部頚椎に歪み・固着をつくり、その結果として、三叉神経が刺激されて片頭痛が発現します。

肩こりと関連して

片頭痛と肩こりは、密接に関連しています。肩こりの筋肉として注目されるのが「僧帽筋」です。僧帽筋は後頚部から肩部、上背部にある大きな筋肉で、副神経・第三,四頚神経の支配を受けています。

ひどい肩こりとして僧帽筋の緊張が取れないでいると、その悪影響が副神経や頚神経を介して上部頚椎領域にも及び、片頭痛を発現させる下地をつくります。

施術のポイント

大後頭神経の末端は、頭頂部において三叉神経第Ⅰ枝(眼神経)末端と吻合しています。また、三叉神経の脊髄路核は、C2まで下降して対側の視床に上向してシナプスしています(増田,2001)。

頚椎の歪み・固着(アライメントの異常)による肩コリの場合、頭部前傾姿勢で頚椎カーブが減少している人が多いといいます。

基本操作・矯正(カイロプラクティック)

C6-T3への矯正は、僧帽筋もゆるめる

肩がこりすぎると三叉神経まで刺激され、緊張型頭痛から片頭痛へと痛みが増悪します。肩こりを緩和することが、片頭痛の予防につながります。

C6-T3への矯正刺激は、浅層に位置する僧帽筋の緊張緩和にも良い影響を与えます。僧帽筋をゆるめることで上部頚椎領域の緊張がやわらぎ、間接的に三叉神経の過剰な状態が軽減するでしょう。

そこで、上部頚椎より遠隔部からの治療刺激として、上部僧帽筋をゆるめるようにC6~T3に操作・矯正を施します。

後は伸張、前は圧迫ストレス

頭は5~7㎏あります。その重い頭が前に傾いた状態が持続すると、伸張ストレスにより上部僧帽筋、肩甲挙筋、後頚筋に、トリガーポイント (痛みを誘発するコリ)が形成されます。

一方、頚部脊柱の前面の筋肉には圧迫ストレスがかかり、椎前筋(前頭直筋、頭長筋、頸長筋、外側頭直筋)、肩甲舌骨筋にトリガーポイントがつくられます。

病態によっては、上記のトリガーポイントを刺激したり、鎖骨を広げて猫背を改善する操作を施したりしながら、頭部前傾姿勢を整えるよう促します。

過緊張をゆるめる手技の補助として円皮鍼を施します。とくにC2横突起への円皮鍼は、胸鎖乳突筋・僧帽筋の緊張を緩和するだけでなく、上神経節への治療刺激も期待して刺鍼します。

また、片頭痛の方には「冷え+のぼせ」がみられる方が少なくありません。そのような場合は、刺激を誘導するように四肢のツボも刺激します。

自宅での対応として

おばあちゃんの知恵に、頭痛のとき「こめかみに梅干しを貼る」という民間療法があります。梅干しの効能は分かりませんが、貼っているのは動脈拍動部でしょう。

拍動性頭痛期の対応として、拍動している外頚動脈の分枝を強圧すると数秒間痛みが減少することが知られています(似田,2015a,p.17)。

片頭痛は、頭蓋内の血管に分布している三叉神経の興奮と、続く血管の拡張と炎症によるものです。頭蓋外拍動部から血管の異常拡張を抑えようと刺激を加えても、大きな効果は得られないという意見もあります。

むしろ、頭痛の発作期に冷やす部位として、こめかみなど動脈拍動部は有効かもしれません。

付 記

三叉神経に関連する上部頚椎に、直接的に治療刺激を施してはいけません。過敏な三叉神経を惹起し、血液循環が促され、頭痛を誘発・悪化させる懸念があります。

上部頚椎に操作・矯正を施さず、その領域の過緊張状態を緩和する手法が必要となります。

上部頚椎は重要だが、刺激してはいけない

カイロプラクティックには、片頭痛は交感神経系に関係する病態として、C6~T3への矯正を重視する理解があります。

片頭痛はほぼ専一的に科学の問題である。片頭痛の65%はC6-T3の甲状腺の機能障害であり、残りの35%がT12-L3のセグメントの問題である。

片頭痛が十分に軽くなるまで、交感神経系にこだわること、決してC5以上、仙骨、腸骨をアジャストしてはならない。

(エドワール カール・ジョゼフ ダネフュー,1999,p.49)

上記のような、カイロプラクティック独自の主張には、否定的な見解があるかもしれません。しかし、片頭痛のとき(三叉神経が過敏な状態のとき)は、決してC5より上部を刺激してはならないという意見は、医学的根拠に基づいて賛同できるでしょう。

僧帽筋の支配神経に注目

片頭痛と肩こりは、密接に関連しています。肩こりの筋肉として注目される僧帽筋は、副神経・第三,四頚神経の支配を受けています。

副神経は迷走神経のアクセサリーのような神経ということから付けられた名称である。副神経には延髄根と脊髄根とがある。

脊髄根は、第5または第6頚髄までの脊髄の側索から出ている線維群である。

脊髄根の線維は、副神経の外枝となる。外枝は、頚神経叢からの小枝(感覚性線維)と一緒になって内頚静脈の背側を下行し、胸鎖乳突筋にはいる。一部の線維は胸鎖乳突筋の中央部の背側面からこの筋を出て下行し、僧帽筋に入ってここに終止する。

頚部では、副神経は頚神経叢、特に第三及び第四頚神経の線維と吻合する。頚神経の線維は僧帽筋の一部を支配している。

(船戸和弥,2012)

ひどい肩こりとして僧帽筋の緊張が取れないでいると、その悪影響が副神経や頚神経を介して上部頚椎領域にも及び、片頭痛を発現させる下地をつくります。

脊柱交感神経系領域の圧迫

カイロプラクティック治効理論のなかに、片頭痛は交感神経系の圧迫に関係する病態という理解があります。

片頭痛の場合、交感神経系の圧迫が原因となることが多く、長期にわたる交感神経系の圧迫を矯正しないでおくと体内の化学物質の異常を起こし、治りにくくなります。

そして以下の脊柱高位が、片頭痛と関連します。

・ 甲状腺機能と関係:C6~T3

・ 副腎機能と関係:T8~T12

・ 月経と関係:L1~L2

そなかで、とくにC6~T3は重視されます。

(塩川,1999,p.92-93)

当治療院の理解として

甲状腺機能と関係する高位であるC6-T3への矯正刺激は、浅層に位置する僧帽筋(中部)にも良い影響を与えます。その効能として、重要な後頚筋である僧帽筋の緊張が緩和され、上部頚椎領域でつくられる三叉神経への侵害刺激も軽減されると思われます。

当治療院では「C6-T3」について、第一に僧帽筋へのマニピュレーション、補足として化学ホルモンの異常を示す脊柱高位と理解して操作・矯正刺激を施しています。


エドワール カール・ジョゼフ ダネフュー著.増田裕訳(1999)THE NOTES ガンステット症状別患者管理ノート.科学新聞社.

船戸和弥(2012)副神経[XI].http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/cranial/cn11.html,(参照日2016年8月3日).

増田裕(2001)くびの痛み.カイロプラクティック神経学(7).東三河医学会誌,107:p.6-8.

似田敦(2015)頭痛.現代針灸臨床論Ⅰ.12.22版.

塩川満章(1999)臨床カイロプラクティック.ルネッサンス・ジャパン.